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画面の意匠権による保護



Q 当社は,スマートフォン用アプリを開発・販売する会社です。画面デザインについては,一定の範囲で意匠法による保護が及ぶと聞きましたが,当社が開発・販売するアプリの画面デザインについても,意匠法による保護を受けることは可能でしょうか。
A スマートフォン用アプリの画面デザインは,意匠法の保護対象たる「意匠」には該当しないため,現行意匠法による保護は及びません。
しかしながら,現在,画面デザインの保護を拡充する方向での法改正が検討されており,近い将来,その旨の法改正がなされる可能性があります。このような法改正が実現すれば,貴社が開発するアプリの画面デザインについても,意匠法による保護が受けられるようになるかもしれません。


(a)現行意匠法による画面デザインの保護



「意匠」(デザイン)の保護を規定する法律として,意匠法があります。現行法においても,一定の範囲の画面デザインについては,意匠法による保護の対象とされています。

具体的には,①物品との一体性が認められ,かつ,②「物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像(表示画像)」(ex.デジタル置時計の画面デザイン)または「物品の機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像(操作画像)」(ex.携帯電話機の機能選択画面)のいずれかに該当する画面デザインについては,意匠法の保護対象たる「意匠」に含まれ,意匠登録の対象足り得るものとされています(意匠法2条1項や同2項,特許庁の審査基準等を踏まえた結論です)。

逆にいうと,これらの要件を充足しない画面デザインについては,意匠法の保護対象たる「意匠」には含まれないことになります。たとえば,①ゲーム機のゲーム実行中の画面,②アイコン画像単体,③ウェブページの画面などは,物品との一体性が認められないなどの理由により,「意匠」には該当しないものと解釈されています。

スマートフォン用アプリの画面デザインについても,現行法上は,意匠権の保護対象たる「意匠」には該当しないものと解されています。スマートフォン用アプリは,たとえそれがプリインストールされたものであるとしても,スマートフォン自体とは別個に創作されるものであるため,物品との一体性要件(上記①)を満たさないからです(特許庁の審査基準によれば,スマートフォン用アプリについては上記②要件についてもその充足性が否定されると説明されていますが,ここではその詳細については割愛致します。)。

(b)画面デザインの保護拡充に関する法改正の見込み



ところで,近時,タッチパネルの普及に伴う GUI の利用拡大や,モニタの高精細化による表現力の向上などといった事情もあって,画面デザインの重要性が飛躍的に増しています。その保護の必要性も,強く認識されるようになっています。

こうした中,産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度小委員会においては,画面デザインの保護を拡充する方向での議論がなされており,同委員会は,意匠法改正の方向性として,以下のような考え方を示しています。

パソコンのように任意の機能を容易に追加できる物品を包含する情報機器という概念を新たに導入し,情報機器に用いられる画像は,物品に組み込まれる画像であるかアプリケーションソフト等の画像であるかを問わず,情報機器の画像の意匠権として権利設定可能とする。
〈産業構造審議会知的財産政策部会 第21回意匠制度小委員会 配布資料5〉

このような内容の法改正が実現すれば,スマートフォン用アプリに関する画面デザインについても,一定の範囲で意匠登録を受けることができるようになります。この場合,自社のデザインについて意匠登録を検討するべきことはもちろんですが,新デザインの開発に着手する際には,類似のデザインについて意匠登録が認められていないか,調査をしなければならなくなります。

(弁護士 高瀬 亜富 H25.7.2)