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ソフトウェアの特許による保護



Q 当社のソフトウェアαについて,特許権の取得を検討しています。プログラムについては著作権による保護が受けられると聞きますが,あえて特許権を取得しておくメリットはあるのでしょうか。
A 著作権による保護は,具体的に表現されたプログラムそれ自体についてのみ及びますが,特許権による保護は,当該プログラムの背景にある処理方法,機能,構成等に及びます。また,著作権による保護は,他者がαに依拠して類似のプログラムを複製・譲渡しているような場合に限り認められますが,特許権による保護は,他者が偶然にαと同様の機能を有するプログラムを生産・譲渡しているような場合にも認められます。これらの点が,ソフトウェアについて特許権を取得しておくメリットといえます。もっとも,特許出願をすると,原則として,出願から1年6か月後には出願内容が公開されてしまいますので,この点には注意が必要です。


(a)特許権による保護



プログラムは著作権及び特許権による保護の対象となり得ますが,特許権は,以下の点で,著作権よりも強力な権利であるといえます。

まず,プログラムに関する処理方法,機能,構成等といった部分については,著作権では保護できないのに対し(著作権法10条3項参照),特許権であればこれを保護することができます。

具体的にいうと,第三者がαと同様の機能を有するプログラムβを無断で販売していても,当該プログラムの具体的な表現がαと異なる場合,著作権に基づきβの販売を差し止めることはできないのに対し(東京地裁平成24年12月18日判決等),αについて特許権を取得しておけば,当該特許権に基づき,βの販売を差し止めることができます。

また,著作権侵害が成立するのは,他者がαに依拠して類似のプログラムを複製・譲渡しているような場合に限られますが,特許権侵害は,他者が偶然にαと同様の機能を有するプログラムを生産・譲渡しているような場合でも成立します。

このように,特許権が著作権よりも強力な権利であるということもあって,ソフトウェアについての特許出願は,数多くなされています。身近なところでは,アップル社がiPhone等に使用している画面ロックの解除に関する技術については,既にアメリカで特許権が認められており(米国特許7657849),日本でも,2013年4月3日現在,特許庁における審査中となっています(特願2012-091352)。

(b)特許を取るには?



特許権を取得するためには,特許庁に対して特許出願を行い,審査官による審査を受ける必要があります。また,特許権を取得することができるのは,新規性や進歩性(特許法29条1項,2項)などといった厳格な要件をクリアした「発明」(2条1項)に限られます。

この点,特許庁が作成した特許行政年次報告書(2012年版)によれば,2007年ないし2011年の特許出願全体における特許査定率は,50パーセント弱から60パーセント程度の間で推移しており,特許権を取得するのは必ずしも容易ではないことが分かります。

(c)特許出願する場合の留意点



特許出願をすると,特許権が取得できるか否かに関わらず,原則として出願から1年6か月後に出願内容が公開されてしまいます(特許法64条1項)。

この場合,公開されたソフトウェアについては,「公知」の情報となってしまうため,営業秘密としての保護を受けることができなくなり(不正競争防止法2条6項),また,特許権が取得できなかった場合には,特許権による保護も受けられなくなってしまいます。ソフトウェアについての特許出願を検討する際には,この点に留意する必要があります。

(弁護士 高瀬 亜富 H25.6.28)