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偽装請負にならないために


ケース 

(登場人物)
X部長:A社のシステム部長
Yさん:X部長の部下
Pさん,Qさん:A社のシステム保守作業の一部を受託しているB社の従業員 

「うちに来ているB社のPさんだけど,いつも指示はYくんから出しているようだね。」
「そうです。Pさんの上司はQさんってことになっていますが,Qさんはセンターに常駐していますから,私からお願いしたほうが早くて確実ですし。Pさんはこちらから指示したことはきっちりやってくれるので,助かっています。ただ,仕事の量も増えてきて,先週なんか毎日残業をお願いしちゃいましたし,今週末は土曜日の出勤もお願いしています。」
「B社との契約は業務委託契約っていうことになっているが・・派遣のC社さんと実態は同じじゃないか」

情報システム部門では,「業務委託契約」という名の下に,ベンダのSEが常駐し,システムの運用・保守作業を受託しているものの,実態としては,あたかも常駐SEがユーザの担当者の部下のように,逐一指示を受けているというケースがあります。
ときには,上記のように担当者が,常駐SEに対して,残業や休日出勤を依頼していることもあります。

このような状況になると,偽装請負だと評価される可能性が高くなります

偽装請負とは,契約の形式上は業務請負などとなっていながら,その実態は労働者の供給であって,労働者が委託者の指揮監督下にあることをいいます
勤務の実態が派遣労働にあたる場合には,労働者派遣事業法に基づいて適正な管理・監督が行われなければなりません。違反した場合には,刑事罰の対象にもなります。 

ポイント1  偽装請負かどうかは勤務の実態をみて判断される



では,請負であると認められるにはどうすればよいでしょうか。旧労働省告示(注1)および厚生労働省のマニュアル(注2)によれば,請負と評価されるには,

1 労務管理の独立性

 (1) 業務の遂行に関する指示・評価を請負人自ら行うこと
 (2) 労働時間の管理を請負人自ら行うこと
 (3) 秩序維持・配置転換の決定等を請負人自ら行うこと 


2 事業管理上の独立性

 (1) 自己責任により資金を調達・支弁していること
 (2) 事業主としての法律上の責任を負っていること
 (3) 材料・器材等を自ら調達し,または自己の有する規格・技術に基づいて業務処理すること

が必要だとされています。特に重要なのは,誰が仕事の指示を出して,労務管理の指揮命令を行うのか,請負であると認められるにはどうすればよいでしょうか,という点ですが(上記1(1)(2)),その他の点も総合的に判断されることになります。

偽装請負だと判断されてしまうと,どんな問題が生じるのでしょうか。
まずは,刑事罰の適用対象となります。

そして,罰則の対象とならなかった場合でも,民事上重大な効果をもたらす可能性があります
請負会社の社員だった男性が,偽装請負であったと主張し,受入企業に対して直接雇用の確認を求めた事案において,平成20年,大阪高裁では原告男性と受入企業との間で「黙示の労働契約」が成立していたとして,直接雇用の上,職場復帰させるよう命じる判決が出されました(ただし,平成21年5月31日時点では上告中で,判決は確定していません)。

では,偽装請負だと評価されることを避けるにはどうすればよいのでしょうか。
一つは,上記の旧労働省告示,厚労省マニュアルに従って,契約書上の文言も,業務の実態も請負となるようにすることです。具体的には,作業指示・依頼は,ベンダ,ユーザのそれぞれの責任者を通じてのみ行うことが大原則となります。

しかし,現場のSEのスキルなどの問題もあり,上記のような運用では業務が回らない,という可能性もあるでしょう。そうなると,契約の形式を請負にこだわるのではなく,派遣契約にしてしまう,という方法も考えられます。

当然,派遣契約となれば,別の問題も生じます。まず,ベンダは厚生労働省への届出が必要になります(注3)
ユーザも,労働者派遣法に基づいて派遣先管理台帳を整備するなどの義務も生じてきますし,派遣労働者の安全管理体制,危険・健康障害防止措置について責任を負うことになります。

したがって,まずは事業の実態に応じて適切な契約形式を検討しなければなりません
契約を修正する場合でも,業務を変更する場合でも,管理の負担が高まったり,業務の効率が低下したりする可能性があります。
しかし,偽装請負と評価されうる状態であれば,これは解消しなければならない問題なのです。 

ポイント2  業務の実態が請負といえないときは,無理に業務を変えるのではなく,契約形態を変えることも検討する


(注1) 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示37号)
(注2) 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分基準の具体化・明確化についての考え方
(注3) 労働者派遣法第16条,第17条(特定労働者派遣の場合)。常時雇用以外の労働者を派遣する「一般労働者派遣」の場合には,厚生労働大臣の許可が必要になります(同法第5条,第6条,第7条)。
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