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ソフトウェアライセンス


ケース 

(登場人物)
X部長:A社のシステム開発部長
Y課長:A社の営業課長

「X部長,先日システムを納入したB社から,当社のXML開発ツール『スーパーXML』の引き合いが来ています。お得意様なので,できるだけ要望にこたえたいのですが。」
「スーパーXMLは,自社内部でのツールとして開発したもので,外販することは想定していなかったなあ。まあ,十分外販に耐えうるだけの品質はあるけど。」
「確かに外販となると,外観を整えたりバグ補修に応じたりしなければならないので負担は増えますが,初期ライセンス料をもらえばスーパーXMLの開発費もある程度回収できますよ。」
「わかった。前向きに考えるが,B社には勝手に他社にライセンスしたり,リバースエンジニアリングされたりしても困るので,その点は使用許諾に盛り込んでおいてくれよ。」

他人の開発したソフトウェアを利用する場合,ライセンサ(使用許諾者)から,そのソフトウェアの利用を許諾してもらう必要があります。
そして,ライセンサは,自己にソフトウェアの権利(著作権など)を留保します。
これらの内容を含む契約が,ソフトウェアのライセンス契約(使用許諾契約)です。
上記のケースでは,A社がライセンサで,B社がライセンシです。

では,使用許諾契約にはどのような内容を盛り込む必要があるのでしょうか。
ここでは,使用許諾契約に書いておくべき事項について,順を追ってみていくことにします。

まず,使用権の内容を明らかにしておく必要があります。
ライセンス料に応じた適正な範囲内での使用が行われるよう,限定が必要な場合もあるでしょう。例えば,以下のような事項を定めます。

1.使用許諾の対象には何が含まれるのか。関連資料を提示する場合,何が含まれるか。

2.動作するハードウェアを限定するか。限定した場合,当該ハードウェアが故障した場合はどうするか。

3.使用可能なユーザ数,同時アクセスユーザ数,CPU数等の限定をするか。ネットワーク経由での利用を認めるか。

4.使用目的を限定するか。

5.プログラムを格納した媒体を提供する場合,その所有関係はどうするか。


次に,禁止事項を定めます。基本的に,上記の使用権の内容を逸脱することはすべて禁止事項になるため,使用権の内容を,注意的に裏側から書く場合も多くなります。禁止事項の例としては,以下のようなものがあります。

1.第三者に使用を許諾すること(サブライセンス)

2.複製したり,改変したりすること

3.リバースエンジニアリング,デバッグ,逆アセンブルなどの解析行為をすること


ただし,2の点については,著作権法第47条の2において,複製物の所有者(媒体の所有権を有する者)は,自らの利用に必要と認められる限度において,複製や翻案(改変を加えること)ができるとされています(注1)

また,単に禁止事項を列挙しても,ソフトウェアの場合は目に見える存在ではないため,ライセンサに黙って違反が行われる可能性もあります。実際に発動されるかどうかは別としても,ライセンサまたは,ライセンサから委託を受けた第三者による監査を認める条項がないと,実効性を欠くことになります。

禁止事項を定めるとともに,無用なクレーム対応を回避するためにもライセンサの保証・免責条項も定めておいたほうがよいでしょう。ただし,免責条項を広く取りすぎることは,ライセンシにとっての魅力を削ぐことになりますから,取引関係を考慮しながら範囲を策定することが必要になります。保証・免責事項の例としては次のようなものが考えられます。

1.第三者の知的財産権等の権利を侵害しないこと

2.ソフトウェアの使用による誤作動,データ滅失について責任を負わないこと

3.(ライセンシによる改変を許した場合)不具合が改変部分に起因する場合には責任を負わないこと


3の点については,現実に不具合が生じた場合に,その原因が改変部分にあるのか,そうでないのかを切り分ける作業は容易ではありません。したがって,ライセンシの立場から見れば,このような場合に原因が特定されるまではライセンシに協力してもらう義務を課すなどの工夫が必要になります。


(注1) この規定にもかかわらず,プログラムの複製・改変をいっさい禁じるという契約が有効か,という問題があります。この点に関しては,解釈上の争いがあるため,複製・改変をいっさい禁じたい場合には,複製物の所有権を移転させないほうが無難でしょう。
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