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完成したシステムの権利



Q システム納品前に改めて契約書を見直したところ,開発したシステムの著作権はすべて発注者であるユーザに帰属すると書かれていました。今回開発した仕組みで再利用したものもありますし,もともと当社がもっていたライブラリなどの著作権がなくなってしまうと再利用できなくなってしまうのは困ります。
A 契約締結段階では,著作権を移転してもよいのかどうか検討したうえで,権利を留保すべき範囲も明確にする必要があります。そもそも,著作権を譲渡してしまうとどのような影響があるのかも知っておく必要があります。


(a)モデル契約の記載



平成19年に公表された経産省のモデル契約では,ベンダに著作権が帰属するという案文を推奨していますが,併せて汎用的なものなどを除いてユーザに移転するという案も提案されています。実務上もっとも多いパターンはベンダがもとから有していたものを除いてユーザに移転するというパターンだと思います。

この場合でも,「もともと有していたもの」「汎用的なもの」がベンダに留保されるとしていても,実際に,どの部分が移転するのか,留保されるのかが明らかでないと,後にトラブルになる可能性がありますので,納品時に特定するなどの手続が必要です。

(b)そもそも著作権がないとどうなるのか



ユーザ側には,何が何でも著作権を移転させておかないと使えなくなるという誤解がよくあります。しかし,システムをユーザとして使用するだけであれば,著作権を移転させなくとも実はあまり問題が生じません。

プログラムを単純に実行するだけでは著作物の利用行為にあたらないので,著作権を移転させる必要はありません(細かい論点はありますが割愛します。)。ただし,スマートフォンのアプリなどを配布するとなると,これは複製,公衆送信といった著作物の利用行為が発生しますので,著作権者の許諾なくして行うことはできません。もっとも,著作権そのものが帰属していなくても,著作権者からライセンスを受けていれば可能です。

さらには著作権法47条の3により,プログラムの複製物を所有していれば,自己利用の目的であれば,プログラムの複製あるいは翻案(修正)は著作権者の許諾がなくてもできることになります。

こうしてみると,ユーザとしては,著作権を移転させなくとも困る場面はそれほど多くありません。他方,ベンダは,著作権を移転させてしまうと,そのプログラムを別のユーザに対して提供することは,原則としてできなくなってしまいますので,開発が非効率になり,ひいては価格競争力がなくなってしまいます。

ただし,別途4(x)で述べますが,ベンダが倒産してしまった場合,あるいは資金に困って著作権を第三者に譲渡してしまった場合には新たに著作権者となった会社(それが特に競合会社であった場合などには)との紛争が生じるという問題があります。そのため,ユーザとしては著作権の移転を求めない場合には,倒産時などの対処についても検討しておく必要があります。

(弁護士 伊藤雅浩 H25.3.31)