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システムの完成とは?(納品・検収をめぐる問題)



Q 納入期日には2週間ほど遅れたものの,ユーザに指定されたサーバにシステム一式を格納し,納品が完了したことを通知しましたが,ユーザからは「納品とはいえない。」として契約書に定められた検収をしてくれません。14日以内に検収しない場合は,契約書に従えば,検収合格になると思うので,報酬を請求したいと思います。
A 検収を拒絶する具体的理由次第ですが,システムが客観的に見て完成していれば,ベンダに報酬請求権が生じます。完成していたかどうかは,過去の裁判例では「予定されていた最後の工程を終えているか」どうかで判断する例があります。


(a)システムの完成とは



ベンダが,請負契約の目的物であるシステムを完成させてユーザに引き渡したときは,ベンダに報酬請求権が生じます。そして,多くの開発委託契約では,納品とともにユーザが検査を行い,検査に合格した場合(検収合格ともいいます。)に,報酬請求権が生じると定めています。

こうした規定の有無にかかわらず,システムが完成しているか否かが争われる例は多数あります。ベンダは「提示された仕様のシステムは実現しているから完成している」と主張するのに対し,ユーザは「まだできていない/不具合が多数ある」などと主張するケースが典型例です。

システムの完成は,報酬請求をするベンダが証明しなければなりません。システムは目に見えるものではないことから,完成の立証は容易ではありませんが,次のような基準によって判断する裁判例がいくつかあります(例えば東京地裁平成22年1月22日判決)。
請負人が仕事を完成させたか否かについては,仕事が当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否かを基準として判断すべきである。

すなわち,「予定されていた最後の工程」が終えていれば,たとえ不具合があったとしても,それは完成後の瑕疵担保責任の問題として処理すべきであるとしています(システムの瑕疵をめぐる問題は,別のページで述べています。)。

(b)各種の認定方法



しかし,上記のようにすべての裁判例において「予定されていた最後の工程」で完成判断をしているわけではありません。個別具体的な事情に応じて,裁判所は柔軟な判断をしているようですが,それだけに事前に読みにくいといえます。

システムの完成を否定した事例では,旧システムの機能水準を満たすことが要件となっていたにもかかわらず,達成されていないという例(東京地裁平成22年9月21日判決),検証判定一覧表に照らして未完成項目が多かったという例(東京地裁平成23年4月6日判決)などがあります。

他方,システムの完成を認定した事例には,不具合の無償の補修をアフターサービスであってシステム自体は完成しているとした例(東京地裁平成15年5月8日判決),本番環境で実際にしていたという例(前掲東京地裁平成22年1月22日判決)などがあります。

(弁護士 伊藤雅浩 H25.3.31)