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請負と準委任契約



Q システム開発契約を提示したところ,ユーザから「請負契約」でやってもらいたい。と言われました。「請負契約」と「準委任契約」の違いはわかっているつもりですが,具体的にどういう場面で問題になりますか。
A 報酬を請求する条件などに違いが生じます。請負契約の場合には,仕事を完成させて引き渡す(契約書においては「検収合格」を条件としているケースが多いでしょう。)ことにより報酬請求権が生じます。

また,引渡し後も,瑕疵がある場合には,修補義務,損害賠償義務が生じます。また,再委託についても,契約書に定めがない場合には,請負の場合,原則として請負人の裁量で再委託できるのに対し(未完成の責任は請負人が負います。),準委任の場合は専門家に対する信頼をベースとしていますので,原則として再委託は委任者の承諾が必要です。


(a)請負契約とは


請負人が仕事を完成させ,注文者がそれに対して報酬を支払う


という契約です。請負人たるベンダは,契約の本質的義務として仕事の完成義務を負うことになります(民法632条)。目的物に瑕疵があった場合は,瑕疵担保責任を負います(同法634条以下。)。システム開発の場合,設計フェーズから結合テストフェーズあたりまでが,請負契約を用いられることが多いです。

(b)準委任契約とは



一方で,準委任契約とは,
委託者が,(法律行為以外の)事務を委託する


という契約です(同法656条)。受託者たるベンダは,善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(同法644条)。受託者は,仕事完成義務がないため,瑕疵担保責任を負いません。要件定義や,総合テスト支援フェーズは,準委任契約で行われることが多いです。



(c)契約の性質はどのように決まるか



この区別は,システムが完成しなかったときに,ユーザは契約を解除して損害賠償を求めることができるのか,ベンダは責任を負担しなければならないのか,といった場面で問題になります。また,必ずしもどちらか一方に限定されるのではなく,内容によっては両者の性質を併せ持つという契約もあります。

システム開発に関わる契約で,請負契約であるか準委任契約であるかが争われた事例として次のようなものがあります。

まず,東京地裁平成22年9月21日判決では,要件定義や開発管理を行うことを目的としていた「コンサルティング契約」が締結されていましたが,結局,システムは完成せず,この契約の性質が問題となりました。詳細は割愛しますが,裁判所は請負契約と準委任契約の双方の性質を有するとして,契約の解除と支払済みの報酬の返還を認めました。

次に,東京地裁平成24年4月25日判決では,稼働中のシステムのメンテナンス作業に関する契約の性質が問題となりました。契約上は,工数×単価で報酬を請求する形態になっていたことから「本来は準委任契約に近い性質を有していた」とされましたが,その後の運用において,検収合格が報酬支払の前提とされていたことなどから,当事者の黙示の合意により「その後の運用の実態において,実質は請負に近いもの」と判断されました。

このように,契約の性質は,表題で決まるものではなく,契約書の内容をベースに決めるのが原則ですが,運用の実態も考慮するなど,総合的に判断されることになります。

(弁護士 伊藤雅浩 H25.3.31)